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pianque's blog "blackstar"

北関東の某市で暮らすpianqueが日々感じたことをつづります。表題とかけ離れた記事が増えてきたのでタイトルを変えました。

武田邦彦氏の番組の個人的な見方

原発事故以降、何人かの科学者やジャーナリストがメディアなどで発言し、脚光を浴びましたが、そのうちにネットなどで激しいバッシングを受けて現在はその人達をあまりテレビで見ることがありません。

彼らは確かに事故の危険性について言い過ぎたかもしれないけど、結果的にオーバーであることが判明したというだけであり、事故当時は放射線被曝がどこまで影響があるのか不明だったので、この点はそこまで責められることなのだろうか?とも思うわけです。

私もそんなによく見ていなかったので本当にかなりトンデモなことを言っていたのかもしれませんが、いずれにしろネットでの議論というのは、実社会にそこまで関係していなさそうだというのは、日々ネットに触れている人達も実感として感じたことがあるのではないでしょうか。

少しオーバーだったかもしれない当時の言説を信じて、現在も放射能健康被害を過大に書きたてる人もネットにはいるので、あたかも多くの人がそれを信じているように見えるかもしれませんが、あくまでネット情報ですから…以前美味しんぼ鼻血騒動のことを書きましたが、ネット以外で他の人と話をしていても、むしろ知っている人の方が少なかったです。そういうものだと思います。

ネット情報の信頼性をもう少し上げようと努力されている方々には敬意を表しますが、「色々な人が書く」ということと「ネット自体の商業性」「努力している専門家の多くがSNSや個人ブログで発信しており、匿名の人も多く発言力が今一つ弱い」などの理由で、残念ながらそれは今の所難しいと考えています。

そうした努力する専門家の人達が、例えば「がん放置療法」を提唱する近藤誠を繰り返し批判して近藤誠を信じる奴はDQNという空気をネットに作り出して排除しようとしているように見えますが、空気で同調を強いられることの不条理感に実社会で実はいつも息苦しさを覚えている多くの日本人にとって、「またかよ…」的な反応が出てしまうということも計算する必要があると思います。

 なお、原発事故後の様々なトラブルは断続的にニュースで報じられていますが、我々が明らかに当時を忘れており、関心が薄れていると思います。熱しやすく醒めやすいというのは国民的気質ではありますが、それは反省すべきことです。

武田邦彦氏は事故後にテレビなどによく出るようになった科学者で、原発環境問題などについても、かなりラディカルな発言をしています。専門家によると「信じられないレベルの基本的間違い」と言っている人もいるようです。

それにとどまらず、STAP細胞事件や血圧やコレステロールなど医学の話、歴史の話など、多岐に広がる話をブログでされています。

私自身は武田氏についてあまり興味はなかったのですが、連れ合いが時々ブログを見て色々議論をふっかけてくるので、ブログを読んでみました。

ブログだけではなく、「虎の門ニュース」もちょっと見てみました。

見てみると分かるのですが、武田氏は話がうまく、知識量もあの年齢で驚くほど豊富だと思います。同年代の多くの人は、知的職業についていても(医者とか)知識欲が結構退化していたりします。武田氏の歴史や政治の話などは真偽はともかくとして、面白いと思います。(歴史の専門家の人が見れば色々と異論があるかとは思うのですが。)

あまりに話が色々ありすぎて「どこでそういう話があったのだろう?」と思うものもあります。

武田氏の欠点としては「数字で表現しなくてもいいものを数字で言ってしまう」ことだと思います。「医者の9割は真面目な人」となると何の根拠もありませんが、普通に「医者は真面目な人が多い」と言えば済む話であり、そういう間違いが多いと思います。その数字もかなり大雑把だったりしますし。

あと、専門用語を使わなくてもいい所に専門用語を誤用してしまうなどもあり、NATROM氏などはその点を批判しています。

NATROM氏というネットでは有名なお医者さんはブログ武田氏のことを批判しています。

NATROMさんは非常に深く追究される先生で、その点で医師としての資質は素晴らしいと想像していますが、この指摘に関しては、すべて正しいと思われるものの、割と枝葉末節的ではないかと思います(というと同業者から袋叩きに合いそうですが、袋叩きに合いそうなことはすでにSNSでは結構しゃべってしまっていますね)。

記事の改ざんなどを指摘されていますが、間違ったら書き直すのが普通であり、書き直したことを注釈で入れるのが親切ではありますが、必須というほどでもないと思います。

*ただし、喫煙と肺がんの関連については、私自身は「関連はあり」と考えています。

その他、武田氏のトンデモを指摘する記事もありますが、こちらの方はどこまで本当かよく分かりません。

SNS上で何人かの科学関係者のTLを見る限り、武田氏というのはもう「トンデモ認定」「話を聞くに値しない人」「信じている奴はDQN」であるわけですが、武田氏のネット番組の再生回数を見る限り、ファンは結構いそうです。

私が興味を持っている分野の話を例で挙げると、「虎の門ニュース」の「血圧の新しい基準値」の話(おそらくSPRINT試験のこと)では、「あんなのは製薬企業のヒモつきの研究だから」とバッサリ、多分そこまで根拠なく言ってしまっています。

なお、製薬会社がスポンサーになっている臨床試験が常にインチキかというと、ディオバン事件などもあったので確かにそういう研究も我々の知らない所でありうるわけですが、むしろスポンサーがない個人の発想による研究に間違いが多いという指摘もあり、このことも理系論文の再現率の低さとしても指摘されている理由の一つであると思います。STAP細胞ねつ造疑惑なども、小保方晴子氏がインチキをしたかどうかは私はよくわからないのですが、個人の間違った思い込みが強かったというのが大きな理由ではないかと思います。U先生のフォロワーに総攻撃されそうですが、製薬会社がスポンサー=インチキという図式は必ずしも成り立たないと思います。

「血圧が高いと脳卒中で死ぬ、血圧が低いと癌で死ぬので、これはもう自分で選択するしかないですよね。私なんかはピンピンコロリという死に方をしたいので高い方がいいかと」に近い発言をされていましたが、問題は血圧が高いと脳卒中だけではなく心筋梗塞のリスクも上がり、それらの疾患は必ずしも致死的なものではなく、いずれの疾患もQOL(生活の質)にかなり影響し医療コストも相当なものであるということなのです。そこまで割り切れる話ではありません。

血圧が低いと癌で死ぬリスクが上がるというのも一つの研究結果であり、それが真実と言い切るのは言いすぎであると思います。

しかし一方で、血圧を下げすぎてふらつきに悩んでいる高齢者や、コレステロールの薬で体がだるいなどの副作用が出ていても我慢している患者さんというのは、割としばしば見ます。循環器内科にかかっている患者さんというのは基本的に血管疾患のハイリスク群ですから、降圧目標を低めに設定するのはその意味では当然ですが、そのことばかりに集中してしまうと、QOLが低下したり他の病気に対する注意が人によっては逸れてしまう可能性もあります。

血圧というのは目に見える数値であり、分かりやすいものです。それが健康のバロメーターであると思っている人は多いです。

外来で血圧を測って高いとショックを受ける人が多いのですが、外来血圧は上がるものなのでそこまで気にしなくてもいいとお話をしても、なかなか納得されない方もいます。

しかし、血圧のみが健康のバロメーターではありません。

一日5回血圧を測ってとても安定した数値だったのに突然死してしまった患者さんを見たことがありますが、残念ながらそこまで病気は予防できないのです。

このことは色々な医師も指摘しており、例えば名郷直樹先生の本を読んで頂くと、降圧薬やコレステロールの薬が「本当はどこまで有用なのか」について、懇切丁寧に書かれています。

そして、武田氏ブログに書かれている本質的な疑問というのは、同業者やそれ以外の人達から出されることはあまりありません。

なので武田先生のブログを読んだとき、まるで子供(とはいえ知識量はある)から鋭い質問が来たかのような、「こう聞かれたら自分がどう答えるかで自分の理解度がはっきりわかるのではないか」とことに、ハッとさせられたのです。自分は賢いと思って定説に何の疑問も抱かない人達よりも、これはずっと「科学的態度」なのではないかと。

ネットでは誰もが人より賢くあろうとするため、トンデモな人や言説をネタにして嘲笑する人は沢山いると思いますが、その中には問題の本質をよく理解せず、有名な科学者がトンデモと言っているからあれはトンデモなんだろうぐらいの認識で攻撃している人がいるはずです。

良心的な科学者はネットの信頼性を上げるために書いているのに、そういう人達が結果的にネットの信頼性を下げてしまっているのは皮肉なことです。

そして何よりも、トンデモを排除してしまう科学の世界というのは、非常につまらないと思います。後から間違いであると分かることはたくさんあるでしょうが、専門家集団がタコツボ状態になって専門外の人の率直な疑問をトンデモ扱いするというのは、どう考えても健全な状態ではありません。きちんと答えればいいだけのことです。

なので、極論すればトンデモ=科学的な態度の一種である、とも言えると思います。それらの多くは本当にトンデモかもしれませんが、その中に画期的なものがもしかしたらあるかもしれません。日経サイエンスなどを見ても、素人目にもこれはどうなんだろう?という研究は時々あるのですが、不思議とそれらはトンデモ認定されていません。

トンデモが問題になるのは、ビジネスと結びついている場合(EM菌とか)や、近藤誠や内〇先生のように言説が健康被害に結びつく可能性がある場合です。武田先生も血圧やコレステロールについて書いていますが、人を脅かしているというよりはむしろ素朴な疑問を呈しているだけであり、医師の言うことを鵜呑みにせずに自分で考えるように視聴者に促しているものです。

なので、武田先生の話を鵜呑みにしてなんの疑問も抱かない人というのは、武田先生のブログを読むべきではないと思います。知的好奇心を刺激し、常識と思われていることをまず疑い自分で考えましょうというのがブログの主旨だと思いますから、結構間違っている部分がありそうだというぐらいで読んだほうがいいはずです。間違いを自分で見つけていくのも知的作業です。

大学の先生がこういう先生だったら、講義はなかなか面白かったと思うのですが、こういう人が私の大学にいなかったのは残念なことでした。

私が若手だった頃、専門医試験の時に勉強に疲れると「ヤヌスの鏡」という神経症候学の本を読んでいました。「神経内科タブロイド」と揶揄されたりしている本ですが、自ら「異端の神経内科学」とうたっています。武田氏のブログにはそれと共通するものを感じます。

武田先生の政治的なスタンスは反リベラル的ではあると思いますが、いつも見ているビデオニュースのパーソナリティである神保哲生氏や宮台真司があまりに欧米かぶれというか、精神が欧米に浸蝕されていることに割と鈍感であることに最近ちょっとがっかりしているpianqueとしては、明るく清々しい愛国心というのは、なかなかに癒されるものであったりします。武田氏の主張も時折非現実的ではありますが、リベラルほど根暗じゃないのはいいですね。

(リベラルの皆さんごめんなさい。リベラルも別に嫌いじゃないんですが、自らの欺瞞に鈍感な人を時々見るので、そこに疑問を呈してくれる人は貴重だと考えられるリベラルの方がもしいれば、その方には心からの敬意を表したいと思います。)