pianque's blog "blackstar"

北関東の某市で暮らすpianqueが日々感じたことをつづります。表題とかけ離れた記事が増えてきたのでタイトルを変えました。

コウノメソッドと神経内科医の問題点

認知症の画期的治療と(一部で)噂されるコウノメソッドについては以前から耳にしていたのですが、「何かのサプリメントを推進している医師」(普通の医師がもっとも嫌うあからさまに商業的態度の医師)という認識しかなく、興味のある患者さんがいても「まあ効いたらよいでしょうね」という程度の話で済ませておりました。

考案者の河野和彦先生のブログにコウノメソッドのガイドラインが載っていますが、治療方針はともかく、河野先生の用語があまりにも独特すぎて、「大丈夫なんだろうか?」…という気がしていたのです。

「製薬会社の儲けのために高価な薬を売っている」というのは、ワクチン陰謀論者なども同じことを言うのですが、読む側にかえってある種の警戒感を与える場合があります。少なくともガイドラインには書かなくても良かったでしょう。

もっとも、pianqueも「何故こんなに認知症の新薬についての勉強会が突出して多いのだろう」と、常々思っております。需要が多いというのもありますが、そもそも認知症薬が安価だったら、こんなに多くはなかったかもしれません。

しかしそれが、最近では長尾和弘先生のような信頼できる医師もコウノメソッドを支持する発言をされており、これは専門医面して無視するわけにいかないのではないかと思い、治療ガイドラインの本を読んでみました。

そして読んでよく自省もした部分が、神経内科医の硬さという点でありました。

興奮や暴力的行為、徘徊などの「陽性症状」が出ている患者さんに抑制系の薬物をきちんと使い、環境に適応してもらうというのが非常に特徴的なのですが、これらの抑制系の薬物は、日本老年医学会で「高齢者が避けたほうがいい薬物」として挙げられているものです。

このリスト、きちんと使えば全く問題ない漢方薬までリストに挙がっており、本来リストに挙げるべき薬剤が載っていないなど色々問題があり、さらに言えば高齢者はすべての薬剤は慎重投与が必要で、全ての薬剤を避けたほうがいいといえばいいのです。生命に関わらない症状に対する薬剤は飲むなというメジャー科の驕りがリストから垣間見える(というのはマイナー科の僻みかも)し、そういう発想は高齢者のQOLということをあまり考えていないのではないかとも思えます。

それはさておき、認知症患者に「認知症が悪化するから」という金科玉条のもとに全く抑制系薬物を使わない医師も相当数いると思います。

それは確かに原則正しいのですが、認知症は悪化しなくても暴れて家族との関係が破綻してしまうと全員が不幸になるという状況もありえます。正しいことが正解ではないという一つの例ではないかと思います。

認知症が多少悪化してもいいから家族と患者との良好な関係を保つため、色々な助言やユマニチュードなどのケア的アプローチを行ったうえで必要なら抑制系薬物を使う」「前頭側頭型認知症は抑制系薬物を適切に使うとかえって認知症がよくなる場合もある」という河野先生の主張は一理あると考えます。

ユマニチュード認知症へのアプローチとしては非常に素晴らしいものですが、やはり時間がかかるため、全ての人が実践できるわけではないでしょう。

勿論、全ての患者さんにうまくいくわけではないでしょうし、そのことは河野先生も自覚されているようです。

しかし、神経内科医はどうかというと、正しいこと=正解という思考が未だに根強いと感じています。

機能画像診断などをしてきちんと確認しない限り前頭側頭型認知症も診断できず、診断できないため治療できません。

最近は脳血流シンチのほかにDATスキャンやアミロイドPETなど画像診断の選択肢が増えてきましたが、検査できる施設が限られており、検査費用も比較的かかります。高齢者であれば一割負担ですが、検査費用自体は公共の保険を使って行うものなので、全例に行うにはあまりにコストパフォーマンスが悪いです。

「検査はせいぜいCTかMRIでよい」という治療中心主義な発想は診断する方もずっと気が楽ですし、認知症神経内科医や精神科医に押し付けているかもしれない一般の内科医も、少し慣れれば比較的簡単に実践することができます。

フルスタディを行わないと診断できないという認知症専門医は、診断学にかなりの重点を置いてきた神経内科医の思考の癖をよく表現しています。神経内科医(基本いい人達なのですが)の中には、自分の診断学の手の及ばない領域、例えば神経症状のある身体表現性障害の患者さんや診断のつかない症状の患者さんを軽く見るような人もたまにいます。

その思考の癖が、ともすると水俣病裁判で精神医学会に批判されたような硬直した思考や、診断にあまりに重きを置き過ぎて目の前の患者さんを見ていないという、教育機関などでよくある事象を生むということにもなります。

最先端の医療機関であればそれはある程度必要なことかもしれません。

しかし末端の開業医のような所でその態度は許されないと思います。

コウノメソッド自体は、同意できる部分とそうでない部分があり、普通の治療法でもよくなる患者さんもいるため、きちんと吟味して治療する必要があることを付記しておきます。